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2023/11/09ブログ

アンサンブル5「ポッペーアの戴冠」

2022年11月11日の記事に続いて、バロックオペラを紹介しようと思います。モンテヴェルディ(1567~1643)の「ポッペーアの戴冠」です。本作は、1600年ころに勃興したオペラを一気に芸術的な域に高めた作曲家モンテヴェルディが、晩年である1642年に作曲したものです。

古楽を用いて、バロック音楽らしい優雅な曲と歌唱が続く名作ですが、本作はストーリーが特徴的で、大変興味深いです。というのも、本作が、古代ローマの暴君ネローネ(一般的なラテン語表記ではネロ、以下同じ)が最初の皇后オッターヴィア(オクタウィア)を追放・殺害して愛人のポッペーア(ポッパエア)と結婚するという、ポッペーアの皇后への戴冠を題材にしているからです。しかも、ポッペーアの勝利は(少なくとも表面的には)否定的に描かれたりはしません。一般的には、オッターヴィアは貞淑で可哀そうな皇后、ポッペーアは悪女というふうに描かれますから、本作は全く逆なのです。

また、本作では、2幕の冒頭でネローネが自らの師であり助言者でもあった哲学者セネカに自殺するように命じるのですが、それを受けて、①セネカは友人たちに別れを告げます。これに対して、②セネカの友人達が〈死ぬなセネカ〉と歌うアンサンブルがあります。それでも、セネカはストア派の哲学者らしく、③静かに死を受け入れて退場します。その後場面が変わり、④小姓と侍女が恋に戯れつつ軽妙な二重唱(この曲が本当に美しい!)を歌います。
この、①③のセネカの静寂で重厚な歌唱と、②④の享楽的な歌唱と瑞々しい古楽の演奏の対比、曲の変転が素晴らしいのです。

滅多に上演されないので、DVD等で楽しむのが現実的なのですが、上記の①~④の対比を最大限楽しめるのは、私の知る限りでは、1978年から1979年にかけて制作されたチューリヒ歌劇場モンテヴェルディ・アンサンブル、アーノンクール指揮のDVDでしょうか。これのどこが優れているのかは、ここで書くと長くなりますので、別の機会にお話ししたいと思います。

(松井 和弘)

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