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語源について3(fig)

先日買ったネクタリンが美味しかったことに味を占めて、今日もまた果物売場に行くと、奈良県産の無花果が売っていました。
大きな無花果が少し入った包みと小さな無花果が沢山入った包みが置いてあり、大きな無花果は小さな無花果よりも魅力的で、大きい方が欲しかったのですが、かなり悩んで、家族全員に行き渡るように、小ぶりのものが多く入った包みを買い求めました。

さて、無花果のことを英語ではfigと言いますが、「ラテン語ficus(イチジク)が語源で、プロバンス語figaを経て借入された言葉である。」【シップリー英語語源事典初版第2刷(大修館書店)521頁(rapの項)から引用】とのことです。

ラテン語が語源とあるのを読んで、塩野七生の「ローマ人の物語」で読んだ共和政ローマの政治家、大カトーの逸話を思い出しました。
紀元前3世紀に共和政ローマとカルタゴは、二度に渡る死闘(第一次、第二次ポエニ戦争)を戦い、いずれも、辛くもローマが勝利しました。(ちなみに、カルタゴの名将ハンニバルが、象と一緒にアルプスを越えてイタリア半島を攻撃したのは、第二次ポエニ戦争でのことです)。
第二次ポエニ戦争の後、ローマはカルタゴの軍備を大幅に制限したうえで、多額の賠償金を課します。ところが、有力な商業国家かつ農業国家であったカルタゴは、その後ぐんぐんと経済力を回復します。
カルタゴの台頭を危惧した大カトーは、元老院で大きくみずみずしいカルタゴ産の無花果の実をわざと落とし、人々がその大きさや立派さに驚くのに対して、これの産地はローマから僅か海路三日の距離に過ぎない、それほど近くに強力な国があるのだから滅ぼすべきだと言ったと伝えられます。
結局、カルタゴは、紀元前2世紀中葉に、ローマによって完全に滅ぼされてしまいます(第三次ポエニ戦争)。

大カトーの逸話で出てくる無花果が大きいことを踏まえれば、私が今日、大きな無花果の方を買っていれば、このブログの話も、もっと綺麗にまとまったのかもしれません。しかし私は、無花果を選ぶ時には大カトーの逸話のことは完全に忘れていました。

とはいえ、私は、家族に行き渡らせる必要に応じて小さな無花果の方を買ったのですから、「汝が欲するものを買うべからず、必要とするものを買うべし。」という大カトーの言葉【世界名言大辞典第7版(明治書院)69頁(金銭の項)から引用】を無理に有利に解釈すれば、私は免責されて然るべきではないでしょうか。(松井和弘)
2020年08月14日

語源について2(nectar,nectarine)

果物売場に行くと、季節に応じて沢山の種類の果物が並んでいます。
大抵は、りんごやはっさくのような一般的な果物を買うのですが、たまに、よく知らない果物を買うと、新しい味に出会えて楽しいものです。

最近、果物売場で少しだけ並んでいたネクタリン(標準和名:ズバイモモ)を買いました。形は、スモモそのもので、大きさはスモモよりも一回り大きかったです。食べてみると、酸味と甘みがいいバランスで、桃とスモモの間の味(私はスモモ寄りだと思いました)がして、おいしかったです。

ネクタリン(nectarine)は、nectarから来ています。nectarは、ギリシャ神話での神々の飲物であり、大変美味で不老不死をもたらすものとされます。
「nectarはギリシャ語の語根nek-(死)とtar-(打ち勝つ)とからなると考えられている。その美味しさ故に、nectarine peach(ズバイモモ)と名づけられた果物は後には単にnectarine(ネクタリン)と呼ばれるようになった。」【シップリー英語語源事典初版第2刷(大修館書店)37頁(ambrosiaの項)から引用】とのことです。

上記のように、nectarは、神々の飲物ということで、桃とは直接関係は無いのですが、私がネクターという言葉に初めて触れたのは、ネクターという商品名の濃厚な桃の缶ジュースでした。濃厚な桃の味がして、缶ジュースの中では、この甘さの上品さは随一だと思っています。他の缶ジュースで代替できる味ではないと思えて、私は好きなんですが、この桃ジュースの印象がずっと残っていたおかげで、その後ギリシャ神話等でnectarが出てくる度に、あの濃厚な桃の味がしましたね。(松井和弘)
2020年08月10日

語源について1(-law)

8月は、松井和弘が担当致します。
5月の記事と同様、法律相談や事件の依頼をしていただく際には、一切前提としていただかなくて結構ですので、お気軽にお読みください。

日常生活を送るのにも、仕事上文章のやりとりをするのにも、言葉の意味をきちんと理解していれば足り、語源にまで足を踏み入れる必要は一切ありません。
とはいえ、語源を知ることにより、えっ、そういう意味から来ていたの?と思うことや、全く新しい言葉に触れるのは、それ自体楽しかったりします。
そこで、今月は、個人的に面白いなあと思った語源を紹介していきます。

私が、最も驚いたものとして、「-law」があります。
これは、例えば、mother-in-law(義母)というように使います。 motherが実母で、結婚相手の実母がmother-in-law(義母)というわけです。

私は、結婚によって法律上母親になるから、mother-in-lawなのだと思っていましたが、実は、これは誤りで、このlawは、「決まったこと」、「結婚」という意味でした。mother-in-lawは、法律上の母親ではなく、より直接的に、結婚によって生じる母親といった意味合いなんですね。

「この語には、この語が連想させるような法律上の関係はまったくない。法律上の(legal)関わりやもつれを表す言葉にはラテン語lex,leg-(契約、規定、法令)に由来するものが多いが、-lawは・・・れっきとしたサクソン語であり、アングロサクソン語ではlage(決まったこと)、ゴート語ではliuga(結婚)で」ある【シップリー英語語源事典初版第2刷(大修館書店)373-374頁(-lawの項)から引用。他の項目を参照する箇所等省略した部分あり】とのことです。

語源の話をするにあたって、最初は仕事柄、法律っぽい言葉で、、と思って選んだところ、法律とは全く関係なかったというお話でした。(松井和弘)
2020年08月09日