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2022/07/26ブログ

なかなか進みませんが、少しずつ源氏物語を読み進めています。「蓬生」、「関屋」、「絵合」、「松風」、「薄雲」、「朝顔」、「少女」、「玉鬘」、「初音」、「胡蝶」、「蛍」ときて、今は「常夏」の途中です。今で、やっと全体の半分弱といったところでしょうか。再来年の大河ドラマが紫式部らしいので、そのときまでには読み終えたいですね。

さて、いよいよ玉鬘が登場します。玉鬘は、2021年6月20日の記事で触れた夕顔と頭の中将との間の娘です。20年余り所在不明だったのですが、かつて夕顔の女房だった右近と初瀬の長谷寺で偶然再会するのです。右近は、今は源氏に仕えているので、玉鬘を源氏に引き合わせます。その後、源氏は玉鬘を娘として養育しつつ、その一方で口説こうとするというような、現代小説では考えられない展開を見せることになります。

源氏が養育している玉鬘のことは噂になり、兵部卿の宮や柏木などが想いを寄せることになります。最近読んだところでは、源氏が蛍で玉鬘を照らして兵部卿の宮に見せる情景が美しく思えました。

「御几帳の帷子を一重うちかけたまふにあはせて、さと光るもの、紙燭をさし出でたるか、とあきれたり。螢を薄きかたに、この夕つ方いと多くつつみおきて、光をつつみ隠したまへりけるを、さりげなく、とかくひきつくろふやうにて。にはかにかく掲焉に光れるに、あさましくて、扇をさし隠したまへるかたはら目いとをかしげなり。」【訳:(源氏が)御几帳の帷子を一枚横木におかけになるとともに、さっと光る物を、まるで紙燭をさし出したかと姫君はびっくりなさいます。蛍を薄い帷子に、この夕方沢山包んでおいて、光を包み隠して置かれましたのを、何気なくあれこれお世話をなさるようなふりをして、急にこのように明るく照らされましたので、姫君が驚いて扇でお隠しになったその横顔は、いかにも美しい感じです。】(正訳 源氏物語 第5冊 8頁)

現代よりも遥かに光源が限られている平安時代に、蛍で少しの間だけ想い人の顔がほのかに照らされるのを見れば、兵部卿の宮でなくても「かくおぼえなき光のうちほのめくを、をかしと見たまふ」(同10頁)となるのは無理もないのではないでしょうか。(松井 和弘)

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