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2022/07/06ブログ

アンサンブル3(「愛の妙薬」)

気分が落ち込んだときにお勧めなのが、ドニゼッティの「愛の妙薬」(原題:L’Elisir d’Amore)です。
主要登場人物は、以下の4人です。
(1)ネモリーノ:ちょっと間抜けだが純情で一途な若い農夫
(2)アディーナ:多少わがままだが根はやさしくて情が深い地主の娘
(3)ベルコーレ:ネモリーノの恋のライバルの軍曹
(4)ドゥルカマーラ:行商人。ネモリーノに惚れ薬を求められると、安葡萄酒を売りつけるいかさま師。でも、憎めないところもあるんです


物語は、アディーナが「トリスタンとイゾルデ」を村人たちに読み聞かせるところから始まります。

・・・無情なイゾルデにトリスタンが恋をしました・・・賢い魔法使いはトリスタンは魔法の壷の中にある愛の妙薬を与えました・・・彼が愛の妙薬を飲んだとたん、たちまち強情なイゾルデの心はやさしくなり、トリスタンの恋人になりました・・・

もちろん、アディーナも村人も、実際にこんな惚れ薬があるなどとは思っていません。あくまで、お話の中の薬と理解しています。ところが、ネモリーノは、ドゥルカマーラに惚れ薬を注文し、ドゥルカマーラもそんなものは無いのに安葡萄酒を惚れ薬と偽ってネモリーノに売りつけるのです。

この作品には、いろんな組み合わせのアンサンブルが出てくるのですが、今回は、ネモリーノとアディーナを中心に取り上げます。

まず、1幕1場の最後で、愚直に恋情を吐露するネモリーノに対し、アディーナは、親切なそよ風にきいてごらんなさいな、ユリかと思えばバラに、牧場かと思えば小川にと飛び回るのかって・・・と歌ってネモリーノを受け入れません。この二重唱では、ネモリーノの情感の籠った歌唱、アディーナの美しい歌唱の組み合わせをきくことができます。

次に、1幕2場では、愛の妙薬を飲んで強気になったネモリーノとアディーナとの二重唱が軽快な掛け合いのようで、楽しい気持ちになれます。

そして、厳密にはアンサンブルではありませんが、2幕2場のネモリーノの有名なロマンツァ(恋愛にまつわる抒情的な歌曲)とそれに対する返歌とも言えるアディーナの情感のこもった美しいアリアが心を揺さぶります。ここで、ネモリーノの想いは通じてハッピーエンドになります。

全体として面白可笑しい筋書きでありながら、情に篤い二人の想いには心を打たれるものがあります。
今回紹介したアンサンブル以外にも、素晴らしい二重唱、三重唱、四重唱がたくさんありますし、ドニゼッティの曲もこのオペラのテーマにしっくり来て、本当にいいオペラです。(松井 和弘)

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