2021/06/08ブログ
アンサンブル(「ノルマ」)
前回の記事で書いた「パルムの僧院」を読んでいるときに、同時代の曲を聴きたくなって、ベッリーニの「ノルマ」をCDで聴きました。すると、やはり「ノルマ」は好くて、一度では終わらず、繰り返し聴き、さらには手持ちのDVDを観ることになりました。
「ノルマ」は、古代ローマ時代のガリア地方(現在のフランスあたり)が舞台のオペラで、ローマの支配下にあるガリア地方にローマから総督ポリオーネが派遣されているという設定です。そして、ノルマの父らを中心として、ガリア人がローマの支配を脱する戦いを起こそうとしているところから物語が始まり、ポリオーネがガリア人の巫女ノルマと秘密裡に恋仲になって子供が生まれたものの、ポリオーネが別の巫女のアダルジーザに心移りしたことによってもたらされる悲劇が描かれます。
「ノルマ」で一番有名な箇所は、1幕1場の真ん中あたりでノルマが一人で歌うアリア《清き女神よ(Casta Diva)》でしょう。ノルマが澄んだ声で歌うこのアリアは、これだけで単独で歌われることも多いですし、もちろん素晴らしい曲です。
オペラではどうしてもアリアが有名になりがちなのですが、2人以上によるアンサンブル(重唱)の魅力も捨てがたいと思います。今回、私が何度も「ノルマ」を聴きたくなったのは、1幕2場の最後あたりから2幕1場にかけてのアンサンブルに魅了されたからでした。
私がきれいだなあと思ったアンサンブルを取り上げますと、
(1)〔【1幕2場】アダルジーザとポリオーネ〕ポリオーネがアダルジーザにローマに来るように誘いアダルジーザは悩みながらもそれを受け入れる
(2)〔【2幕1場】ノルマとアダルジーザ〕アダルジーザがノルマに対し愛する人ができたから巫女の職を辞したいと打ち明けノルマはそれを許可する
(3)〔【2幕1場】ノルマ、アダルジーザとポリオーネ〕アダルジーザが愛する人がポリオーネであることが判明し、ポリオーネはノルマに許しを乞うが、ノルマは激怒する。ノルマとポリオーネの関係を知らなかったアダルジーザはポリオーネを拒絶する。
といったあたりです。(あらすじを書いていると、どうしようもない話のようにしか思えませんが、歌唱やオーケストラが本当にきれいなんです。物語的には、これに引き続く2幕2場、3場で悲劇的な結果を迎えることになります。)
もう何年も前になりますが、日生劇場で「ノルマ」を観たときに、(2)がいいなあと思って、とはいってもそうそう上演されないので、CDを買って少し聴いて止めていたんですが、今回聴いてみると、(2)だけでなく(1)(3)の良さもわかって、幸せな気持ちになりました。やはり、アリアもいいですがアンサンブルの良さも捨てがたいですよね。
そういえば、去年の6月にも大阪で「ノルマ」が上演されるはずだったんですが、新型コロナウィルスのせいで中止になってしまいました・・・。私たちが新型コロナウィルスを早期に克服できることを願ってやみません。(松井 和弘)