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2021/10/25ブログ

受胎告知

10月14日と15日に弁護士会の用事で岡山市に行く機会がありましたので、倉敷まで足を伸ばして、大原美術館に行きました。目当ては、エル・グレコの「受胎告知」で、これを一度は観たかったのです。

「受胎告知」は、大天使ガブリエルが聖母マリアにイエスを身籠ったこと(処女懐胎)を知らせる場面です。時代を越えて多くの画家がこのテーマを描いてきました。例えば、古くは5世紀のモザイク画で既に描かれています(サンタ・マリア・マッジョーレ聖堂、ローマ)し、それまでの西洋絵画の人物の表情の乏しさに雪解けをもたらしたジョットも、スクロヴェーニ礼拝堂(パドヴァ)の一連のフレスコ画の中でガブリエルとマリアを対置しています(私はこれらをまだ観られておらず、いつか何とか観に行きたいです・・・)。

私が「受胎告知」ってすごいなあと思ったのは、何年か前にフィレンツェで何枚かの作品を観てからです。空気遠近法を使ったレオナルド・ダ・ヴィンチのあの有名な「受胎告知」もあれば、マリアが身を捩り顔には驚きの表情を浮かべたシモーネ・マルティーニの「受胎告知」(いずれもウフィツィ美術館、フィレンツェ)もありました。
しかし、これらの作品を観ただけなら、私にとって、「受胎告知」も他の西洋絵画のテーマの一つのままだったと思います。サン・マルコ修道院で1階から2階に向かって階段を昇ろうとしたときに、正面に見えるフラ・アンジェリコの「受胎告知」に描かれたマリアの清らかで素朴な顔を忘れることはできません。このフラ・アンジェリコの作品に心を打たれて、他の作品も観てみたいと思い立ったのです。

そういうわけで、去年にもイタリアに行こうと計画していたのですが、新型コロナウィルスのせいで行けなくなってしまいました。そうしたなかで、日本国内でエル・グレコほどの巨匠の「受胎告知」を観ることができるのは本当にありがたいことです。
大原美術館にあるエル・グレコの「受胎告知」は、時間帯が夜に設定されており背後の暗闇の中に閃光が描かれている点や、宙に浮くガブリエルをマリアが左下から振り返りざまに見上げる構図が躍動感に溢れていました。一般的な「受胎告知」では、時間は昼間ですし、ガブリエルとマリアは同じ高さにいるので、本作はこれらの点で特徴的で、動的な印象を残しますね。

そのほかにも、大原美術館には、19世紀から20世紀にかけての著名な画家(特に印象派)の絵画が多数展示されており、訪れて本当に良かったです。印象派の中では、カミーユ・ピサロが好きなのですが、「リンゴ採り」を観ることができてよかったです。あと、モディリアーニが描いた肖像画も心に残りました。

やはり、「受胎告知」をたくさん観るためにも、イタリアにはあと何回か行かないといけない、スペインも行きたいけど・・・と思いました。いつになるんでしょうか・・・  (松井 和弘)

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