その他
刑事事件
逮捕・勾留手続きのあらまし
逮捕と勾留はいずれも留置施設で身柄を拘束されるものですが、期間に違いがあり、逮捕は最長でも72時間なのに対して、起訴前の勾留は最長で10日+延長10日(一定の重大犯罪については再延長+5日)となります。
一般的には、逮捕→起訴前の勾留(10日+10日)→起訴→起訴後の勾留、という手続きがとられることが多いです。起訴後については保釈の制度があり、これが認められれば釈放されることになりますが、起訴前には保釈の制度はありません。
もし逮捕されたら
できるだけ早く弁護士を呼びましょう。
弁護士を呼ぶ場合、知っている弁護士がいれば、留置施設の職員(警察官)に「○○弁護士に面会に来るよう伝えてほしい。」と言ってください。
もっとも、その弁護士にも予定があるなどして、すぐには留置場に駆けつけることができない可能性もあります。また、知っている弁護士がいない場合もあります。こういった場合には、留置施設の職員に「当番弁護士に来てもらいたい。」と言えば、派遣要請を受けた弁護士会を通じて、当番弁護士が原則として24時間以内に面会(接見)に駆けつけます。
なお、勾留後には、希望すれば国選弁護人がつきます。
家族が逮捕された場合には、直ちに弁護士に相談に行ったり、あるいは弁護士会に当番弁護士を派遣するよう頼むことができます。ほかに、家族としては、着替えや防寒着、お金(留置施設内で便せんなどを買ったりするのに必要です。)などの差し入れをすることができるので、できるだけ早くしてあげてください。
調書への署名は慎重に!
捜査の中で、被疑者として、あるいは被疑者の家族として、捜査機関による取調べを受けることがあります。
取調べの際に注意したいのは、調書に一旦署名してしまうと、それをあとから撤回・修正するのは極めて困難で、調書が独り歩きしてしまうおそれがあるということです。このことは、周防正行監督の「それでもボクはやってない」という映画
(この映画はとても良くできている、いい映画だと思います。) の中でも取り上げられていますので、ご存知の方も多いでしょう。
冤罪や不当に重い刑罰に苦しめられないようにするためには、調書に署名する前に、①手にとって自分で読む(警察官らに代わりに読んでもらわない。)、②内容に納得いかなければ訂正を求める、③納得できないなら署名しない、ということが何よりも大切です。
弁護人をつけることの意味
たとえば接見が禁止されている被疑者は、家族であっても面会することができませんが、弁護人は自由に接見することができます。また、接見の禁止がなくても、家族等の面会は平日昼間の15分間程度に限定されるのが普通ですが、弁護人にはそのような限定はなく、土日、夜間、長時間の接見も可能です。
また、不当な捜査がなされていれば、それについて法的な助言をすることはもちろん、場合によっては、捜査機関に抗議して是正を求めることもあります。
このような、接見を通じた外部との連絡、冤罪等から身を守るための法的助言などのために、できるだけ早い段階から弁護人をつけることはとても重要です。
少年事件
少年事件での弁護士の役割
少年事件には、2つの視点があります。
1つは、冤罪や不当な捜査から少年を守るという視点で、これは刑事事件の被疑者・被告人の弁護と同様の視点です。もう1つは、未来ある少年の健全な成長を支援するという視点で、これは少年事件に固有の視点です。弁護士としては、これら2つの視点を持って活動をしていくことになります。
なお、少年事件は、捜査後、原則として全件家庭裁判所へ送致されます。家庭裁判所送致前の被疑者段階の弁護士は「弁護人」、送致後の弁護士は「付添人」と呼ばれます。
具体的な付添人活動
少年事件では、主に、①非行事実の内容、②少年の要保護性(少年自身の非行事実に対する受け止めはどうか、少年や保護者の課題の内容とそれへの対応についてどのようなフォローが見込めるのか、少年の生活環境は更生に資するものか、被害者への対応はどうなっているのか、学校や職場等の社会資源にはどのようなものがあるのか等)、を考慮して結論が出されることが多いです。そのため、付添人としては、これらを意識した活動を行うことになります。
少年が観護措置をとられて少年鑑別所に在所しているような場合には、付添人は、面会をし、少年に必要な法的助言をしたり、少年が事件や被害者のこと、生活や家族のこと等について振り返って反省を深めるための支援(一緒に考える、課題を与えて考えてもらう等)をするなどします。
それと同時に、家族、場合によっては学校や職場との間で、少年の生活環境の調整をすることもあります。特に私立学校や高校生の場合、退学等の恐れもあることから、どのタイミングでどのように学校に知らせるのかどうかといった点も含めて検討を行うこともあります。
また、家族には、少年自身と同様に、なぜこのような非行が起きてしまったのかを振り返ってもらう必要があり、付添人はそのサポートを行うこともあります。
被害者への謝罪や弁償・示談についても、事情が許せば、付添人が被害者と交渉等を行うこともあります。
その他、付添人は、家庭裁判所の調査官や裁判官との面談や法律記録(事件の記録)・社会記録の閲覧などをして審判の準備をした上で、審判に臨むことになります。
犯罪被害者支援
犯罪の被害に遭ったとき
車に轢かれたり、けんかに巻き込まれてけがをさせられたり、人はだれしも、犯罪の被害に遭う可能性を否定できません。
もし犯罪の被害に遭ったときは、できるだけ早く、警察に被害届や告訴をすべきです。時間が経てば経つほど、証拠が散逸してしまい、立件することが困難になってしまうかもしれません。証拠の散逸は、刑事事件(適正な刑罰)だけでなく、民事事件(損害賠償)においても、マイナスとなりえます。
弁護士としてできること
犯罪の被害に遭った依頼者のために弁護士ができることには、様々なものがあります。
たとえば、加害者と被害者の間で示談の話し合いが持たれることがありますが、被害者側の心理としては、加害者側と会いたくない、会うのが怖いといったこともよくあります。そのような場合、弁護士が被害者側の窓口となって、示談の交渉をすることができます。
また、刑事事件についていえば、告訴状を作成したり、これを警察に提出するといったことがあります。被害者側の手持ち証拠が十分でない場合など、事案によっては警察がすぐに対応しない場合もありますが、そのような場合には、弁護士が被害者の代理人となって警察と交渉することもあります。
さらに、一定の犯罪では、被害者は加害者の刑事裁判に参加(これを被害者参加といいます。)して意見を言うなどできますが、弁護士が被害者から委託を受けて、被害者本人に代わって刑事裁判に出席することもできます。被害者参加の対象でない事件では、被害者代理人として、被害者側の事情を検察官に適切に伝えて、被害者の想いをくんだ公判活動をするよう申し入れるといった交渉をすることもあります。
民事事件では、刑事記録などの証拠書類を入手したうえで、弁護士が被害者の代理人となって、加害者に対して損害賠償を請求する裁判を起こしたりすることもできます。
できるだけ早く弁護士にご依頼を
このように、弁護士は刑事・民事の両面において、被害者の気持ちをくみとりつつ、適切な法的助言をすることができます。
もちろん、法的助言を最大限活かすためには、被害に遭ってから間がないうちにご相談いただくのが最善です。
なお、当法律事務所には、女性・男性弁護士がともにおりますので、安心してご相談ください。