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ヴィンランド・サガ

11月は、松井和弘が担当致します。
5月や8月の記事と同様、法律相談や事件の依頼をしていただく際には、一切前提としていただかなくて結構ですので、お気軽にお読みください。

今日、書店に行くと「ヴィンランド・サガ」の最新巻(24巻)が置いてあったので、買い求めました。 「ヴィンランド・サガ」は、紀元1000年ころのイングランドや北欧を主な舞台とした漫画で、同時期に北回り航路で北アメリカ大陸に到達したとされるレイフ・エリクソンやトルフィン・カルルセヴニの活躍を描きます。
また、ノルマンコンクエスト(1066年)以前の、デーン人が侵入していた時期のイングランド情勢やクヌート大王による北海帝国(クヌート大王がイングランド・デンマーク・ノルウェーの3国の王位についたことによって11世紀前半に形成された帝国。大王の死後早期に崩壊。)の形成過程も描かれており、この点でも興味深いです。

ヴァイキングによる北米大陸到達は近年の考古学的成果によって史実であるとされており、そうすると、旧大陸の人間が新大陸に到達したのは1492年のコロンブスから500年余りも遡ることになります。ただし、ヴァイキングは北米大陸での活動を長期間維持することはできず、後世に与えたインパクトはコロンブスの新大陸到達と比して極めて小さかったと言えます。

さて、法律に関連した話をしますと、「ヴィンランド・サガ」には、クヌートがトルフィンが所属する農場の農場主ケティルに対して、「平和喪失処分」を宣告する場面が出てきます(幸村誠著「ヴィンランド・サガ」13巻78頁)。同頁の注に、「平和喪失・・・犯罪に課す刑罰。宣告された者は特定地域内において、命や財産を保護する法律が失効される。事実上の国外退去命令。」と記載されています。

もちろん、「ヴィンランド・サガ」には史実とフィクションが織り交ぜられており、クヌートがケティルに平和喪失処分を宣告したのはフィクションだと思われます。とはいえ、ヴァイキングを主に構成したノルマン人はゲルマン系であるところ、平和喪失処分というゲルマン法の色彩の強い要素がストーリーに絡んでくる点が、この作品に深みを与えているといえます。

「ヴィンランド・サガ」は、戦いの無い世界を実現できるのかという大きなテーマをもちつつ、紀元1000年あたりのヴァイキングの活動という今まであまり取り扱われなかった分野を、コミカルな要素も交えながら描くという点で、かなり出来のいい作品だと思います。作者がコンスタントに話を進めていってくれる点もすばらしいですね。(松井 和弘)
2020年11月07日